PSO2 Ship9で活動するRPチーム「IF A.R.K.S」についてまとめたページです。人物紹介、チームの事や活動紹介を主にサイト内に掲載していく予定です。また、チームメンバーについてのお知らせや連絡等も兼ねようとも思っています。

ふと、目が覚めた。
霞んで見えるのはいつもと変わらぬ木材の天井だった。
視線を横へずらせば、眩い日の光が差し込んでいて
寝惚けた目を刺激する。
朝だ。
そう、いつもと変わらない朝が来た。

微睡んだ思考に柔らかく暖かい布団に包まれた身体は
起きるという行動を阻害するには充分すぎる甘い誘惑だった。
そう、まだ起きるには早い。
朝餉の時間にはまだ早い。
時計を見ていないが、何故かそんな気がする。
眠りの誘惑に誘われるがままにそう判断した彼女は
日の光を遮るように布団を頭まで被り、そしてまた夢の中へ旅立とうとしていた。
そんな時だった。

「姫様、失礼します」
柔らかい声と共に、
舞い散る紅葉が描かれた雅な襖が開かれる。
そこには、三つ指をつき頭を下げている女性がいた。

女性はやがて顔を上げ目の前に敷かれている布団と
その布団で作り上げられた小さな山を見ると困った様に眉尻を下げ、小さく笑った。

「あらあら、今日も素晴らしいお山ですね。ですが姫様、そろそろ起きる時間ですよ?」

「ぅぇぇ…凛華ぁ…まだ早いやん…朝餉の時間ちゃうよぉ…」

小さな山の中からくぐもった声が聞こえ、女性…凛華は再びクスリと笑う。

「あらあら、今日がなんの日か忘れてしまったのですか?今日は玉依祭…村中の人達みんなで幸運と豊穣をお祈りし、幸運の象徴である玉依姫誕生をお祝いするお祭りですよ?」

「たまよりまつり…?あぁ…そやったっけ…」

「フフフッまだ寝惚けているのですね?ですが、今日は姫様には頑張っていただかねば…姫様は、幸運の御霊をその身に宿した、玉依姫なのですから」

切れ長の瞳を細め、凛華が微笑むと
姫様と呼ばれた少女が、
布団の小山の隙間からのそのそと顔を覗かせる。
そして、不服そうにその頬を膨らませる。

「…姫様って言うの…嫌」

「あらあら、私にとっては大切な姫様ですよ?もちろん、村の人達にとっても」

「…嫌…」

「あらあら…」

ボソボソと不満をこぼす少女に凛華はどうしたものか…と困った様に息を吐く。

「うち…別にみんなに幸せを与えてないよ?みんなが幸せなのは、みんなが頑張ってるからやもん…うち…なにもしてへん…それなのに、はは様もとと様も過保護で、屋敷の外に出してくれない…うち…もうこの屋敷飽きた…」

少女はそう言うと再び布団の中へ潜り込んでしまう。

先祖代々続く村の長の家系で産まれた少女は、生まれながらにしてその身に強い力を秘めた魂を宿していた。
魂は生きる者ら全てに宿っていて、
さらには「気」という形で自然界にも漂っている、生きる源である。

少女の中の魂は一際強い力を秘めており、少女が産まれたその日から
この村の土地が豊かになり、緑が溢れ、作物が良く育つようになった。
村の人々も笑顔が溢れ、小さな村であったが活気に満ちるようになった。

どういう原理でそんな現象が起きたのか、誰にも検討がつかなかった。
そして、何故それが彼女のおかげなのか
誰が言い出したのかもわからなかったが
村人達は、強い魂を持って産まれた彼女を
幸運の魂…「和御霊」を宿した姫
「玉依姫」と呼び、大切に大切に育てていったのだ。
そのせいもあってか、両親や使用人からは過保護過ぎる扱いを受けてきた。
屋敷の外へは滅多に出た事がなかったし
必要な物は全て買い与えられてきた。
何一つ不自由なく暮らして来た彼女だったが
その心は、曇り空であった。

「村が豊かになったのも、村の人達が明るくなったのもうちのおかげやないもん…うちはただ、普通に生きてただけやもん…なんにもしてない」

「姫様…」

凛華は、少女が産まれた時からの侍女である。
少女が産まれてから、その身の周りの世話を任され
時には稽古の師を務め、時には少女の守り人として片時も離れずに共に生きてきた。
守るべき少女の事を、可愛い妹の様に思ってもいた。
だからこそ、彼女の胸に秘めた日頃の不満や村人達からの過剰なまでの尊敬の眼差しに対する戸惑いを理解していた。
少しの沈黙のあと、凛華は口を開いた。
「…そうだ、此度の祭では、姫様の御信託のあとに飲食の屋台が出店されるみたいですよ?」

ピクリ
飲食の屋台という言葉に小さな山は動く
凛華は、心の中で笑いながら続ける。

「たこ焼きにお好み焼き、イカ焼きに焼きそばにりんご飴にかき氷、綿あめもありますね。お肉なんかも用意されるとか…」

「お肉…!」
布団のなかから嬉しい悲鳴のような声が聞こえる。
そして再び少女の顔が布団から出てくる。

「…神託が終わったら、私が息吹様に掛け合ってみましょう。賑わう村の祭を是非とも姫様にも味わっていただきたいと」

「…ほんま?」

「フフッえぇ、「ほんま」です」

布団から出した顔はパァァと明るい笑顔になり
少女は丸まっていた掛け布団から出てくる。
そして、すぐさま鏡と向き合い、櫛で髪を梳かし始め、凛華の用意した着物に着替え、部屋を後にした。
その顔は、先程までの寝ぼけ顔とは違い、凛々しくも可憐な顔立ちだった。

一章・玉依の姫
それは、幸せをもたらす籠の中のお姫様

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